詩「終着駅・R惑星」
今日も上司に怒鳴られた
些細なことで怒鳴られた
嗚呼 俺は何にも悪くないのに
酒に溺れ うつろな瞳で 最終電車に乗り込んだ
意識は朦朧と すべての景色が 夢と交錯したとき
終着駅が見えてきた
いつもの街と違うことに気付いたけど
どうにもならない もどかしい中年男性
佇む街は廃墟ばかりで 安ホテルすらも見えはしなかった
ヨレヨレの背広は仕事の勲章
ビールの薫りはサラリーマンの味
R惑星に着いたと気付いたら 現実逃避が出来る喜びに心は奪われた
R惑星で冒険を始めたら 少年時代の秘密基地が傍にある気がした
暖簾が見えて 入った店は 見憶えのある蕎麦屋だった
店主に宿を尋ねた まっすぐ歩けと言われた
去り際に振り向いてみると 人の影じゃなかった
焦燥感に駆られて 俺は走り出したけど
行くアテも無いのに 何処へ行けばいいのか?
宛先のない俺が彷徨う街は ずっと夜のままだった
今来た道を戻ってみたけれど 駅はなかった
生きることに 限界を感じた
だけど 死ぬ勇気はなかった
地平線の先に朝陽が見えてきた
夢から醒めたら いつもの場所にいた
すべては闇の中
【カバンを開けると、定期が無くなっていた】
詩集『Poetry Essential Vol.01(2016)』より
作:坂岡 優
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