詩「削除」

あの発言が 取り消せるなら
たぶん 今も僕は君と暮らしているだろう
だけど 取り消せない決断が
僕の後悔を増幅させてしまう

都会のバーで 酒に溺れて
見知らぬ女に 惚れてしまい
汗水垂らして 稼いだ金は

グラマラスな香りとともに 消えていく

この日々も やり直せるなら
どんな風に この札束を使うのだろう

浴びるように飲み続けた マルティニの瓶が
スーツ姿の僕を 現実へ呼び覚ます

世間体ばかりを気にする大企業で
僕は企業戦士として働いてきた
大きな責任ばかり負うのは もう懲り懲りなんだと
僕はさっき 辞表を上司に叩きつけてきた

こうすれば良かったのに その瞬間から後悔ばかり
あの時間だけ データを消すみたいに 削除出来れば楽なのに

冬のヨコハマに 独り歩く 元中年サラリーマン
春の予感 漂う街で 僕は背広姿で孤独を愉しんでいる
今日も 朝陽が見えてきた

詩集『Poetry Essential Vol.02(2017)』より
作:坂岡 優

Yuu Sakaoka Lyrics Library

ここでは、創作家・坂岡 優が2016年より発表してきた詩を一作品ずつご覧いただけます。

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