詩「翼」
翼があれば 何処へでも行ける
当たり前のことだけど
今の僕には 折れた翼だけ
世界の広さを知る由もない
かつての友や恋人が懐かしい
僕もきっと大人たちのように
自分を捨ててしまうのだろうか
怒りと不満だけが募っていく
折れた翼を片手に どんな夢を叫んでも
誰も振り向いてくれないけど
僕は僕でいたい 大きな意志だけは持ってる
「何も変わらないかもしれない」
世界を変えるような力を持っていたとしても
見えない何かが押さえつけてしまう
「人生」はそんなものだからって
悟ってしまう 自分が嫌いだ
大人になったら 夢に生きるんだと
子供の頃は信じてた
世界中の 困っている人を 救ってみせるんだ
折れた翼は すべてを知ってる
「君には無理なんだ」
幼い頃の僕を 悲しみの雨が諭した
いつのまにか 僕は現実に生きるタダの人間になってた
仮面を被って 無表情で 会社のために汗を流し続ける
「虚しくないか?」
自分自身に心の中で問いかけた
翼はないのに 翼は知ってるのに 翼に頼ってきたのに
僕はその翼を置いて 現実世界で生きようとしてる
どんなに可能性があったとしても 確実性に駒を進めようとしてる
プライドが邪魔をする そんな自分が世界で一番嫌いだ
プライドを持つのは五十を過ぎてからでいい
曇空に向かって叫んだ
「誰も聞いていないよ。」と風は返してくる
自分の無力さに呆れ 折れた翼とともに 僕はただ立ち尽くすことしか出来なかった
詩集『Poetry Essential Vol.02(2017)』より
作:坂岡 優
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