詩「街」

故里の街並が
遥か彼方へ 消えていく

だけど 桜蕾だけは
温かく 送り出してくれた

わたしが決めたことだから
後悔はないけど
もう何処にも 頼れる場所はないんだって
自分に言い聞かせた

いつもの電車も もう乗ることはないんだね
そう思うと 涙溢れて

これでいいのかな 自問自答 繰り返し
これで良いんだよ 良いんだよ 答え 絞り出す
リクルートスーツに付いたシワは 都会への招待状

少しだけ 寂しくなった
友達のLINEも全部消してきた

無通知の 静寂は もう耐えきれない
でも 変わるためには これくらいしないと
「わたしは何処かで元気にしているからね。」
心の中で 田舎の友達に言った

車窓から街が見えてきた
幼い頃 テレビで観た場所は 想像より大きい
見上げても ビルばかり
ちょっとだけ息苦しかった

少し後ろめたい気もしたけど
わたしはここで夢を追うんだって
自分を奮い立たせてみたら そんな憂いも飛んで行く

街は魔法のように わたしを迎えてくれた
ここに相応しい人になるんだと 心に誓ってみる
口に絡んだ 髪を拭って 再び歩き出した

【果てしない闇が 街を包んでいくことに わたしはまだ気付かない】

詩集『Poetry Essential Vol.02(2017)』より
作:坂岡 優

Yuu Sakaoka Lyrics Library

ここでは、創作家・坂岡 優が2016年より発表してきた詩を一作品ずつご覧いただけます。

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